8/10(木) 6:00配信
ダイヤモンド・オンライン
安部改造内閣が問われる「20兆円財政出動」で物価目標2%達成
Photo:首相官邸HPより
秋の臨時国会では補正予算が提出される。政府が掲げる「2%物価目標」を実現するには、その規模はどの程度が適切なのだろうか。
そのカギを握るのが、「GDPギャップ」である。それを埋めるには25兆円程度の有効需要を上乗せすればよく、いまの国債市場の玉不足を考えれば、国債増発による財政出動は正当化される。
● インフレ目標の達成に 経済政策の余地はある
「GDPギャップ」は、実際のGDP(国民総生産)と潜在GDPの差の、潜在GDPに対する比率と定義されている。
問題なのは、潜在GDPである。一般的には、経済の過去のトレンドから見て平均的な水準で、資本や労働力などの生産要素を投入した時に実現可能なGDPとされているが、GDPギャップの大きさについては、前提となるデータや推計方法によって結果が大きく異なるため、相当の幅をもって見る必要がある。
このことはGDPを推計している内閣府や日銀でも注意事項として認識はされている。
内閣府は最近、GDPギャップの推計方法を若干、改訂した。その値は2017年1-3月期では+0.1%としている。もっとも、この結果をもって、GDPギャップがないから既に完全雇用だ、経済対策は必要ないと早合点はできない。内閣府の潜在GDPは必ずしも完全雇用を意味していないのだ。
その理由を簡単に言えば、まだインフレ率は上がっていない以上、まだ失業率は下がる余地があり、インフレ目標達成とさらなる失業率の低下のために、経済対策の余地はあるということだ。
日銀の算出しているGDPギャップについても、内閣府と似た傾向になっており、注意が必要だ。いずれにしても、内閣府と日銀によるGDPギャップの絶対的な水準をそのまま鵜呑みにしないほうがいい。
ただしGDPギャップについては、その絶対的な水準ではなく、その変化はおおいに参考になる。内閣府のデータは公表されているので、それを活用してみよう。
● 2%の物価上昇には 25兆円の有効需要が必要
まず、失業率とインフレ率の関係(フィリップス曲線)を整理しておこう。
それを子細に見ていくと、ちょっと違った姿が見える。
失業率とインフレ率は、逆相関になっているが、実は、両者の間を、GDPギャップが介在している。
例えば、GDPギャップがマイナスで大きいと物価が下がり、失業率が大きくなる。逆にGDPギャップがプラスで大きいと物価が上がり、失業率が小さくなる。
下の図1は、2000年以降四半期ベースで見たGDPギャップとインフレ率の関係である。左軸にGDPギャップ率、右軸にインフレ率(消費者物価総合対前年比)をとっている。GDPギャップは半年後(2四半期後)のインフレ率とかなりの相関関係がある。
◆図表1:GDPギャップ率とインフレ率(半年後)
ここで、GDPギャップとインフレ率の関係から、「2%インフレ」にするために必要なGDPギャップ水準を算出してみると、+4.5%程度である。
それを埋め合わせるためには、有効需要25兆円程度が必要になる。1単位の財政出動による需要創出効果を示す財政乗数が、内閣府のいう1.2程度としても、この有効需要を作るための財政出動は20兆円程度である。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170810-00138218-diamond-bus_all
ダイヤモンド・オンライン
安部改造内閣が問われる「20兆円財政出動」で物価目標2%達成
Photo:首相官邸HPより
秋の臨時国会では補正予算が提出される。政府が掲げる「2%物価目標」を実現するには、その規模はどの程度が適切なのだろうか。
そのカギを握るのが、「GDPギャップ」である。それを埋めるには25兆円程度の有効需要を上乗せすればよく、いまの国債市場の玉不足を考えれば、国債増発による財政出動は正当化される。
● インフレ目標の達成に 経済政策の余地はある
「GDPギャップ」は、実際のGDP(国民総生産)と潜在GDPの差の、潜在GDPに対する比率と定義されている。
問題なのは、潜在GDPである。一般的には、経済の過去のトレンドから見て平均的な水準で、資本や労働力などの生産要素を投入した時に実現可能なGDPとされているが、GDPギャップの大きさについては、前提となるデータや推計方法によって結果が大きく異なるため、相当の幅をもって見る必要がある。
このことはGDPを推計している内閣府や日銀でも注意事項として認識はされている。
内閣府は最近、GDPギャップの推計方法を若干、改訂した。その値は2017年1-3月期では+0.1%としている。もっとも、この結果をもって、GDPギャップがないから既に完全雇用だ、経済対策は必要ないと早合点はできない。内閣府の潜在GDPは必ずしも完全雇用を意味していないのだ。
その理由を簡単に言えば、まだインフレ率は上がっていない以上、まだ失業率は下がる余地があり、インフレ目標達成とさらなる失業率の低下のために、経済対策の余地はあるということだ。
日銀の算出しているGDPギャップについても、内閣府と似た傾向になっており、注意が必要だ。いずれにしても、内閣府と日銀によるGDPギャップの絶対的な水準をそのまま鵜呑みにしないほうがいい。
ただしGDPギャップについては、その絶対的な水準ではなく、その変化はおおいに参考になる。内閣府のデータは公表されているので、それを活用してみよう。
● 2%の物価上昇には 25兆円の有効需要が必要
まず、失業率とインフレ率の関係(フィリップス曲線)を整理しておこう。
それを子細に見ていくと、ちょっと違った姿が見える。
失業率とインフレ率は、逆相関になっているが、実は、両者の間を、GDPギャップが介在している。
例えば、GDPギャップがマイナスで大きいと物価が下がり、失業率が大きくなる。逆にGDPギャップがプラスで大きいと物価が上がり、失業率が小さくなる。
下の図1は、2000年以降四半期ベースで見たGDPギャップとインフレ率の関係である。左軸にGDPギャップ率、右軸にインフレ率(消費者物価総合対前年比)をとっている。GDPギャップは半年後(2四半期後)のインフレ率とかなりの相関関係がある。
◆図表1:GDPギャップ率とインフレ率(半年後)
ここで、GDPギャップとインフレ率の関係から、「2%インフレ」にするために必要なGDPギャップ水準を算出してみると、+4.5%程度である。
それを埋め合わせるためには、有効需要25兆円程度が必要になる。1単位の財政出動による需要創出効果を示す財政乗数が、内閣府のいう1.2程度としても、この有効需要を作るための財政出動は20兆円程度である。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170810-00138218-diamond-bus_all