http://www.js-cs.jp/wp-content/uploads/pdf/journal/18/cs2012_03.pdf
本稿では、特撮ヒーロー番組で示されるヒーロー像には、その時代の社会が求める望まし
い人間像が少なからず反映されているのではないか、との仮説を前提に、ヒーロー像の描写
変化についての分析を行ってきた。すなわち、特撮ヒーロー番組の一事例として「仮面ライ
ダーシリーズ」を取り上げ、経時的な分析に基づきながら、そこでどのようなヒーロー像が
描かれ、過去のそれと比べてどのような特徴を有しているのかについて、「学歴」「趣味・特
技」「性格」という三つの視角から分析を行ってきた。分析の結果得られた主要な知見は以下
の三点である。
第一に、「昭和ライダーシリーズ」では、大学在学経験がある主人公が多く描かれているの
に対し、「平成ライダーシリーズ」では、大学在学経験がない主人公が多く描かれていること
が確認された。
第二に、「昭和ライダーシリーズ」では、身体的能力の高さを感じさせる趣味・特技を持つ
主人公が多く描かれているのに対し、「平成ライダーシリーズ」では、身体的能力の高さを感
じさせない趣味・特技(例えば料理)を持つ主人公が多く描かれていることが確認された。
第三に、「昭和ライダーシリーズ」では、陽気で明るく爽やかな「頼りがいのある」主人公が
多く描かれているのに対し、「平成ライダーシリーズ」では、「頼りない」、あるいは「頼り難い」
主人公が多く描かれていることが確認された。
以上の知見を総合すると、「昭和ライダーシリーズ」では、頭脳明蜥で運動神経抜群、その
上性格的にも申し分のない頼りがいのある「優等生的なヒーロー像」が描かれているのに対
し、「平成ライダーシリーズ」では、頭脳明蜥なわけでも運動神経抜群なわけでもなく、おま
けに性格的にも頼りない、あるいは頼り難い、いわば「劣等生的なヒーロー像」が積極的に
描かれている。