日本獣医師会の蔵内勇夫会長は西日本新聞とのインタビューで、学校法人「加計(かけ)学園」
の獣医学部新設に向け「あの手この手で根回しみたいなこともあった」と証言した。
主なやりとりは次の通り。
−獣医師は不足しているのか。
「全体として充足しているし、将来的な需要も増えない。最もいい例は犬。
日本で1千万頭くらい飼われているが、15年後には600万〜700万頭に減るといわれている。
開業獣医師の大半はペットを診察している。犬が減るのに獣医師を増やしてどうするのか」
−学部新設は獣医師の都市部偏在を変えることにならないか。
「国家資格を取って、処遇の悪い場所で働くはずはない。
偏在解消を図るなら、まず獣医師の処遇改善を行うべきだ」
−昨年11月に決定した「広域的に獣医学部が存在しない地域に限り新設を認める」との政府方針
により、事実上加計学園に事業者が絞られたとの指摘がある。
安倍晋三首相は国会で「獣医師会の意見に配慮した」と答弁したが。
「規制緩和が決まった後は、確かに『1校にして』とお願いした。
新設を回避できないなら、せめて1校に限るべきだと思ったからだ。
しかし、それ以前はそもそも新設に反対で、要望したことはない」
−この時点で、事業者は加計学園に絞られたと思ったか。
「思った。複数の大学関係者から『加計が準備している』と聞いていた。
あの手この手で根回しみたいなこともあった。加計になるんだなと分かっていた」
−文部科学省の前川喜平前事務次官は「行政がゆがめられた」と言っている。
「特区で強引に大学をつくることは、文科省と獣医師会が取り組んできた既存大学の改革の流れ
に逆行する。行政がそこでゆがめられたというのは当然だ」
−首相は獣医学部新設について「全国展開を目指す」と明言したが。
「特区そのものに反対するわけではないが、動物の命を守り人の健康を支える獣医学と都市開発
の規制緩和を同列に論じるのはおかしい。
学術は特区になじまない。それに教師をどうやってそろえるのか。全国展開できるとは思えない」
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/340056/