https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-02-16/Q4YFAHT1UM0Y01
→アパート100万室計画に幹部らサイン、現状は1%以下と大幅未達
→国内ホテルオーナーから不満・疲弊の声、契約の解消示唆も
昨年3月、ソフトバンクグループ本社の大会議室では孫正義社長らがホテル・不動産賃貸事業を手掛けるインドのOYO(オヨ)の日本戦略について議論し、
ホワイトボードに15のアイデアを書き込んでいた。
複数の出席者によれば、とりわけ孫氏の目を奪ったのはアパート「100万室供給、2020年3月まで」との文言だ。
それから数カ月後、あの米ウィーワーク問題が表面化する。
ブルームバーグが入手した資料と出席者への取材によると、オヨが既存の不動産市場を変革できると確信していた孫氏は、ボードに書かれた目標について、
同席した部下らに署名を求めたという。
必達を迫る「BINDING」の文字の下に、幹部4人は赤いペンでサインした。
1年近くが過ぎたが、オヨが扱うアパートは現在7500室と目標100万室の1%以下だ。
上場中止と1兆円の金融支援を強いられたシェアオフィスのウィーワークに続き、孫氏が厳しい現実と対峙する案件となった。
スタートアップに数千億円規模で投資し、規格外の成長を求めた結果、前途有望なビジネスをかえって傷付けてしまうケースが起きている。
ブルームバーグが取材した二十数人の関係者によれば、日本で拡大路線を進んだオヨは事業パートナーや従業員ともめ、顧客の信頼も傷つけた。
ツイッター上には「被害者の会」も結成された。日本だけではなく、インドや中国、米国でも似たような問題を抱えている。
孫氏は12日の決算会見で、オヨについて「素晴らしい会社だ」と評価。
「一部のホテルのオーナーと意見の食い違いがあると聞いている」とした半面、「今現在もホテル数、メンバー数、宿泊客数は一貫して伸び続けている」とも話した。
ソフトバンクGはオヨの社内の問題について孫氏の発言以上のコメントはできない、としている。
ただ、適切なコーポレートガバナンス(企業統治)の下、日本で持続可能な形で拡大ができると確信しているとも説明した。
オヨは今週、2019年3月期の損失が3億3500万ドル(約370億円)と、前年同期比で6倍以上に拡大したと発表した。
一方、収入は9億5100万ドルで4倍以上に増加した。
■不動産テックと若いカリスマの共通項
オヨは6年前、当時19歳のリテッシュ・アガルワル氏が創業した。
ホテル事業では低価格ホテルをおしゃれに改装し、人工知能(AI)で需要を予測、客室料金を決める仕組みを導入した。
家具家電付きのアパート事業では敷金・礼金・仲介手数料無料のサービスを提供し、全ての手続きがスマートフォンでできる触れ込みだ。
オヨとウィーワークは、不動産テックというビジネスモデルや若いカリスマ創業者がいることが共通点となっている。
ニューヨークのマンハッタン・ベンチャー・パートナーズの調査部門責任者であるサントシュ・ラオ氏は、
「オヨは進行中のウィーワークのようなものだ。減速し、引き返すことが必要」と指摘した。
アガルワル氏はブルームバーグの取材に対し、オヨは日本に必要な新しい概念をもたらしていると主張。
一方で、急成長するスタートアップ特有の「初期の困難」も認識していると語った。
孫氏もウィーワークに続く大きな失敗は避けたいはずだ。
3メガバンクを含む国内外投資家と基本合意書(MOU)を結んでいた12兆円規模のビジョン・ファンド2の計画がいったん白紙になり、
物言う株主のポール・シンガー氏はソフトバンクG株を取得し、自社株買いや経営透明性の向上を求めている。
ジェフリーズ証券アナリストのアツール・ゴヤール氏は、「孫氏に必要なのは彼の名声を回復すること」だとし、「もしオヨが失敗すれば、それは簡単ではないだろう」と述べた。
※中略
しかし、オヨの戦略には当初から誤りがあった。
日本のホテル事業の責任者であるプラスン・チョードリー氏は供給数について、初年度から業界トップのアパホテルを上回る7万5000室を目指したが、
当時の複数の関係者によると、前提とした160万室にはキャンプ場やラブホテルも含まれ、市場規模を過大に見積もっていた。
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