北朝鮮の核・ミサイル開発を支える科学者らの「3人組」に、軍事情報筋が関心を寄せている。ミサイル発射実験後に国営通信が配信する写真で、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と手を取り合って「成功」を喜ぶ3人の姿がみられ、中には高度なロケット科学者もいる。米本土を射程に入れるミサイル保有を何より重視する金氏は専門知識を備えた科学者を重用。「失敗は成功の母」とばかりに、彼らの失敗の責任は不問とする寛大ぶりをみせている。
この3人とは、元空軍司令官で朝鮮労働党軍需産業局の李炳哲(リ・ビョンチョル)副局長、ロケット技術者の金正植(キム・ジョンシク)氏、国防科学院の張昌河(チャン・チャンハ)院長。特に金正植氏と張氏は科学者で、「他の多くの支配層と違って、エリート家の出身ではない」(ロイター通信)。3人はいずれも金正恩氏がその実力を買って抜擢した人材という。
ロケット科学者が牽引
特に欧米の軍事情報関係者は、金正植氏がキーマンとなり、「想定より早く進んでいる」(米情報機関幹部)とされるミサイル開発を牽引してきたとにらむ。
平壌の名門理工大を卒業。当初は軍組織ではない宇宙開発部門に所属していたが、核・ミサイル開発の主要拠点である「第2自然科学院」に進んだ。生粋の技術者だが、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)によると、2015年にロケット司令部の少将に昇進した。
金正植氏は2012年12月のロケット発射で「人工衛星」を軌道に乗せることに成功し、正恩氏の全幅の信頼を勝ち取ったとされる(ロイター通信)。自身が得意とする宇宙開発の知識を土台に、ミサイル計画を推進する上で高い能力を発揮しているとみられる。
過去に北朝鮮国営メディアが報じた映像では、正植氏が正恩氏のプライベート機から一緒に降り立つ姿が確認されたこともある。16年2月に「人工衛星」の打ち上げを祝った祝宴では、正恩氏の妻の隣に席が用意されたという。
3人の中で、同じ科学者でも、張氏の素性は「謎に包まれている」(ロイター)。張氏がトップを務める国防科学院は核・ミサイル研究拠点の中で、軍事活用できる海外からの技術移入も担うとされる。約3000人にのぼるミサイル技術者を抱えているとの情報があり、張氏は正植氏と同様に、正恩氏がこのところ特に引き立てている人物の1人とみられる。
「ビッグ・ポテト」。情報筋からそんなあだ名で呼ばれる李炳哲氏は、3人の中で正恩氏にもっとも近い人物のようだ。ミサイル実験後に配信された多くの写真でも、正恩氏に寄り添うような姿が確認できる。ロシアで教育を受け、正恩氏の父である金正日(キム・ジョンイル)総書記時代から最高指導層に仕え、正日氏の中国やロシア訪問に空軍司令官として随行した。
続きます。
http://www.sankei.com/premium/news/170615/prm1706150005-n1.html
2017.6.15 07:00